名古屋高等裁判所 平成7年(ラ)230号 決定 1996年6月10日
《住所略》
抗告人(原審相手方・本案原告)
鈴木あきらこと
鈴木斐
《住所略》
相手方(原審申立人・本案被告)
伊藤喜一郎
主文
本件抗告を棄却する。
理由
第一 本件抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨は「原決定を取り消す。担保金の提供は不必要。」との決定を求めるというのであり、その理由は、別紙抗告人の平成7年10月4日付け「準備書面(第一回)」写しに記載のとおりである。
第二 事案の概要
原決定の理由欄第二に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三 当裁判所の判断
当裁判所も、相手方の担保提供命令の申立ては理由があり、本案事件の訴え提起の担保として抗告人に対し800万円を供託することを命ずるのが相当と判断する。その理由は、原決定がその理由欄第三の一から三までにおいて説示するところと同一であるから、これを引用する。
抗告人が、当審において抗告理由として主張するところは、いずれも右の判断を左右するに足りない。
第四 結論
よって、本件抗告を失当として棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 水野祐一 裁判官 熊田士朗 裁判官 岩田好二)
別紙
準備書面(第一回)
平成7年(ラ)第235号担保提供申立事件
平成7年10月4日
原告(抗告人)・鈴木あきら
被告(相手方)・伊藤喜一郎
名古屋高等裁判所 民事第1部合議係御中
抗告理由
○原決定は、以下の理由により取り消されるべきものである。
第一、 原決定の供託すべき担保の額、800万円の内訳が全く不明確であるが、恐らくその金額の内、大部分は悪徳弁護士の“悪徳弁護料金”をうのみにしたものを加算しているものと思われる。
第二、 原決定の裁判官は、相手方(被告)の主張は限りなく善意に解釈する一方、原告(抗告人)の主張は限りなく悪意に解釈するといった不公正な審理を行なったと思われる。この証拠の一つが、原決定における「悪意の訴訟」の当局における拡大解釈である。
この当局の「悪意」の拡大解釈は、株主代表訴訟制度の改善を決議した国会決議の趣旨を根底から愚弄し、また無視した不当なものである。
第三、 原決定の理由書において、原告の訴えである特別背任罪および忠実義務違反・善管注意義務違反また株主への利益供与禁止等は本裁判において認められる可能性が低いというが、もし同類種の事件が刑事事件の摘発の場合は、100%起訴されまた100%有罪となっている。本件より著しく軽微な事件であっても起訴され有罪となっている。
第四、 抗告人(原告)は、決定された担保供託金800万円の内100万円相当を本件の担保として供託しよう。これは本件が刑事事件の場合における国選弁護士の料金基準を勘案して決定したものである。
第五、 その他の理由については、添付した原告の原審における「非担保提供命令の申立書」ならびに「準備書面(第一回)」の趣旨を再度確認していただきたい。 以上
平成7年10月4日
抗告人 鈴木あきら